前編からの続きです。
私がひそかに珍本多発国と呼んでいるオランダから印象に残った本をご紹介。
都会で傷ついた鳥たちを手厚く処置し、再び自然に帰す保護施設に運び込まれた鳥を撮影した写真集。「なぜ、けがした鳥を撮影?」と思ったら、この施設でボランティアをしている写真家が撮影したのだとか。青い手袋をした保護員にかかえられた鳥が表紙。まさに治療中という感じのリアルな印象と、写真集としてのアート性がまざりあう不思議な本。
『Vogels huilen niet klein --vogelled in de grote stad--』(鳥は啼かない 都会での鳥の苦しみ)
オランダ
タイトルどおり、オランダの堤防の写真をまとめた本。延々と堤防ばかり出てきます。おそらくオランダの土木建築関係者向けにつくられた専門書だと思うので、資料的価値の高い本ですが、門外漢から見るとかなりシュール。
『Dutch Dikes / Dijken van Nederland』(オランダの堤防)
オランダ
こちらは中国の受賞作品。
毎年、「これでもか」というインパクトのある造本が多かったのですが、
落ち着いた感じの装幀が多かったのが意外でした。
いろいろな職人の仕事を紹介した本。この本自体の造本もおもしろいのですが、華美な感じではなく、おちついたいいかんじに仕上がっています。
『黟県百工』
中国
音楽家ルー・リードに関する文章の本。ぱっと見、ルー・リードの本って全然わからないくらい地味ですが、よくみると表紙に文字のエンボスが施されていたり、細かい配慮が感じされる本。
『pass thru Fire』(パス スルー ファイア)
中国
上海のブックデザイナーの作品を集めた本。表紙のタイトル文字(漢字)の横画を型抜きして、読ませることと、視覚的効果の両方を成立させています。
『上海書籍設計師作品集』
最後に日本の造本装幀コンクールの受賞作から。
武蔵野美術大学 美術館・図書館のデジタルアーカイブをまとめた書籍。全5巻を1冊にまとめて、手製本した特装本だそう。
『博物図譜とデジタルアーカイブ特装本』
日本 文部科学大臣賞、日本印刷産業連合会会長賞
まだまだ紹介したい本はありますが、現物をじかに見ていただければと思います。
展覧会情報はこちら。来年2月末までの開催です。
日時:2015年12月5日(土)~2016年2月28日(日) 月曜日休館
場所:印刷博物館(東京都文京区水道1丁目3番3号 トッパン小石川ビル)
http://www.printing-museum.org/exhibition/pp/151205/index.html
関連イベント:
トークショー「2015年造本装幀コンクール受賞者「受賞作」を語る」
2016年1月30日(土) 15:00~17:00
美篶堂による製本ワークショップ
2016年2月7日(日)10:10~12:40 中級「フランス装」
14:00~17:00 中級「B6各背上製ノート」
過去に書いた記事のリンクはこちら。
世界のブックデザイン2012-13
世界のブックデザイン2012-2013[続き]
世界のブックデザイン2011-12
世界のブックデザイン2010-11展
世界のブックデザイン2009-10
世界のブックデザイン2008-2009展[前編]
世界のブックデザイン2008-2009展[後編]