編集宮後です。
今年もよろしくお願いいたします。
年末にアドミュージアムで見たD&AD展で印象的だった広告をご紹介します。
D&ADはイギリスで開催されている世界的広告デザインのコンペティションで
コマーシャルフィルムのほか、メディアを横断した最新のキャンペーンから
手作業的アナログポスターまで、多彩な部門が設置されているのが特徴です。
展覧会のいいところは受賞映像作品をまとめて見られること。
検索すればネットでも見られますが、字幕付きで一度に見たほうが効率がいいのです。
2014年の受賞作で印象的だったのは以下の作品。リンク先に映像もあるので、お楽しみください。
社会的テーマのものが多かったのと、Facebookなどのソーシャルサービスを
当たり前のように連動させて、より大規模な波及効果を狙っているのが特徴的だと思いました。
まず2014年のBlacl Pencil(最高賞)の中から印象的だったものから。
NS/ProRail – Improving Safety and Comfort on Train Platforms
http://www.dandad.org/awards/professional/2014/digital-design/23017/nsprorail-improving-safety-and-comfort-on-train-platforms/
オランダの駅で実際に導入された告知システムで、これから到着する電車のどの車両がどのくらい混んでいるのかをプラットフォームに電光表示するシステム。混んでいる車両を避けて電車待ちすることができるので、日本でもぜひ導入してほしい。こういう公共のデザインがきちんと評価されているのも好印象。手がけたのはEdenspiekermann。
Sweetie
http://www.dandad.org/awards/professional/2014/white-pencil/23970/sweetie/
「Webcam Child Sex Tourism」(先進国の男性がお金を払って、貧しい国の子供たちにネット上で性的行為や猥雑行為をさせること)を取り締まるため、CGでつくった架空の10歳の少女Sweetieをおとりにした社会的プロジェクト。少女に猥雑行為をさせた男性約1000人が国際警察に検挙された。CGがあまりにリアルなので、CNNほか大手メディアで大々的に報道され、話題になった作品。
以下、Black Pencil以外の映像。
Dill -The Restaurant-
http://www.dandad.org/awards/professional/2014/branding/23348/dill-the-restaurant/
スウェーデンの安売りスーパーマーケットの売り上げを上げるために考えられたキャンペーン。有名シェフを招いて3週間限定のレストランをオープンさせ、ニュースで紹介されるなど話題づくりをしたあとで、そのレストランで使われていた食材がすべて安売りスーパーで売られている商品であることが種明かしされた。単にスーパーの広告をつくるのではなく、実際にレストランまでつくるというアイデアがすばらしい。
You Are My Son
http://www.dandad.org/awards/professional/2014/direct/23440/you-are-my-son/
ゲリラに参加したまま家に帰らない兵士に向けたキャンペーン。兵士の子どものころの写真を実の母親から提供してもらい、「クリスマスには家に帰ろう」というコピーをつけたポスターをつくり、戦地に掲出した。母親しか知らない子どものころの写真を掲出することで、兵士に投降をうながすキャンペーン。クライアントはコロンビア防衛省。
Trial by Timeline
http://www.dandad.org/awards/professional/2014/direct/23446/trial-by-timeline/
普段我々が普通に行っていること、たとえば、お酒を飲んだり、集会をしたり、といった行為が有罪になるような、人権を無視した国家があることを知らせるFacebookのアプリ。自分がFacebook投降した行為が別の国では有罪になることを知らせてくれる。有罪になったときの画面がけっこう怖くて衝撃的。
Food Photos Save Lives
http://www.dandad.org/awards/professional/2014/mobile-marketing/23774/food-photos-save-lives/
Facebook上にアップした食事写真をシェアすると、ユニセフのフードエイドパック(食料危機にひんした国への食料援助セット)が寄付されるというFacebook上のキャンペーン。FBに食事写真をアップする人が多いことから発想した興味深いアイデア。クライアントはユニセフ。
Real Beauty Sketches
http://www.dandad.org/awards/professional/2014/integrated-earned-media/23047/real-beauty-sketches/
自分の顔を本人に言葉で表現してもらい、そのとおりに描いた似顔絵と、第三者に表現してもらって描いた似顔絵を比較するという広告。自分の言葉による似顔絵よりも第三者の言葉による似顔絵のほうが明るくポジティブに描かれているという実証実験をとおして、自分を肯定的に見つめようというメッセージを伝えている。クライアントはユニリーバ。FBでも話題になっていたので知っている方も多いかも。
展示は2015年3月1日まで、東京汐留のアド・ミュージアムにて開催。
新しいコミュニケーションのあり方や最新の広告表現を知る上で必見の展示です。
http://www.admt.jp/exhibition/program/2014_dandad2014.html
追記:2015年1月以降はブラックペンシル(最高賞)のみの展示になりますので、ご注意ください。