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工作舎のこと
編集宮後です。
工作舎関係の本を続けて読んだので、今日はそのお話。

工作舎は、1970年代を中心に出版デザイン史において特筆される存在の出版社。編集者の松岡正剛氏と才能きらめくデザイナーたちによる雑誌や書籍は独自の編集とブックデザインがすばらしく、特に看板雑誌である『遊』はいま見ても新鮮。また、戸田ツトム、羽良多平吉、松田行正、祖父江慎氏などの著名なブックデザイナーも工作舎に関わっていたことから、現在のブックデザインにも多大な影響を与えた存在でした。

そんな工作舎の黄金時代を関係者のインタビューによってまとめた書籍『工作舎物語 眠りたくなかった時代』が刊行されました。松岡正剛氏をはじめ、当時工作舎の社員(舎人と呼ぶそう)や出入りしていたアルバイトなどの関係者に取材し、丁寧にまとめられた貴重な記録です(松岡正剛氏から祖父江慎氏まで9名の証言が章ごとに構成されていますが、特に祖父江さんの章は必読です)。

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『工作舎物語 眠りたくなかった時代』
http://sayusha.com

著者は、デザインジャーナリストの臼田捷治氏。『デザインの現場』以前に刊行されていたデザイン雑誌『デザイン』の元編集長で、自身の体験と重ね合わせながら、当時の様子をリアルに描き出しています。筆者の個人的体験と関係者の証言、そして史実が渾然一体となり、1970年代当時の熱気が伝わってくるようです。同時代を生きた方ならなおさら感慨深い書籍といえるでしょう。

工作舎のスタッフが寝食を忘れて編集に没頭する様子は、雑誌編集者やエディトリアルデザイナーなら「あるある」と自分の体験と重ね合わせて読めるはず。「寝る時間がないのでトイレで仮眠」とか「新聞紙にくるまって寝ると暖かい」とか、壮絶なまでの働き方は今ならさしづめ「ブラック企業」と言われそうですが、言い換えれば、「寝るのも惜しいほど、おもしろい仕事をしていた」わけで、少しうらやましくもあります。編集やエディトリアルデザインに携わるすべての方にぜひ読んでほしい一冊です。

偶然にも、松田行正さんの出版レーベル「牛若丸」から港千尋さんの新刊『ヒョウタン美術館』をいただきました。港さんが調べた世界のヒョウタンにまつわる本なのですが、今回もまた造本がすごい。全頁ロウ引き(紙にロウをひいて、つるつるっとした質感にする加工)なんです。こんな本は初めてみました。よく製本できたなと思って、印刷担当者に聞いてみたのですが、詳細は秘密とのこと。2014年の個人的ベスト珍造本。12月上旬にWAVE出版から発売され、書店店頭にも並ぶそうです。

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『ヒョウタン美術館』
http://www.wave-publishers.co.jp/np/isbn/9784872907339/

ちょうど『工作舎物語』を読んでいたときに、東京藝術大学で杉浦康平さんの講義があり、松田行正さんの出版レーベル牛若丸の新刊を拝見して、工作舎の空気に少し触れることができたように思います。
by dezagen | 2014-11-26 00:01 | | Comments(0)