ライター渡部のほうです。
アメリカ、アーカンソーのホテルで見つけた小さい薬パック「HELP」
http://blog.excite.co.jp/dezagen/22294061/ について、創業者のネイサン・フランクと、デザインを手がけたブランディング会社Pearlfisherに詳細を聞いた。
HELPのラウンチは2008年。ブランディング広告業界にいて出会った若者2人、ネイサン・フランクとリチャード・ファインによりNYで始まったプロジェクトだ。アメリカの薬局事情に疑問を感じ「ほんの少し気分が悪い時、世話をしてくれるのは医者よりも友達であって欲しい」という考えがそもそもの発端だという。
「製薬会社は友達が必要などとは思わない。彼らには科学や医療の世界で通用する独自の美学なり言語なりがあって、それが薬局の棚に溢れている」とネイサン・フランクは言う。
このブログでも書いたことだが、アメリカの薬局ではその量に圧倒された。薬局だから薬がたくさんあるのは当たり前なのだが、例えば頭痛薬の最小サイズが40錠、大きいものでは200錠など、サプリメントか?と思うようなサイズで売られている。
ほとんどの容器はプラスチックボトルでいずれは捨てられる。薬の色も紫やオレンジとかなり毒々しい。
プラスチックボトルは薬を保護し、色は薬を識別させる、とそれぞれ機能があってのこと。とはいえ見慣れない人間には過剰に感じる。
HELPのチームはこれらの「常識化」した事を考え直し、容器には手触りのよいモールドペーパーを起用した。強度と識別性のために色付きのプラスチックフレームを使っているが、生分解するものである。薬そのものに関しても余分な色素を使っていない。
最も重要な点は「少量」という点。頭痛薬やアレルギー用の薬、催眠剤は16錠と小さいパックにしている。
加えて、洗練されたデザインであるところが他大手製薬会社、ドラッグストアチェーンのプライベートブランドとの違い。
2008年に発売された最初のパッケージでは、
モールドペーパーの容器のデザインをChapps Malinaが、
http://chappsmalina.com
グラフィックデザインをLittle Furyが
http://littlefury.com/work/help-remedies まず手がけた。
Chapps MalinaのHPでは、製品になるまでのサンプルモデルも掲載されていて、いかに小さく、使いやすい容器にするか試行錯誤の跡が見える。
「小さな会社が流通していくには、パッケージが最も重要なコミュニケーションツール」とネイサン・フランクは言う。
2011年、コミュニケーション強化のため、Pearlfisher
www.pearlfisher.com/designs/help_packaging がパッケージをリニューアルする。
既存のパッケージの特徴は活かし、文字を太く、大きく表示した。それまで薬の形はエンボスで表現されていて、これはモールドペーパーならではの特徴であったが、思い切って印刷でのグラフィックに切り替えた。
「エンボスになっていた薬の形は印刷のグラフィックに変え、それぞれ枠の色と合わせたことで、目に付きやすく、識別しやすくなっている。このパッケージの中で薬の形のグラフィックは、HELPが持つ独自の言語で、これが消費者とのタッチポイントでありコミュニケーションになるだろう」(ジョナサン・フォード, Pearlfisher クリエイティブパートナー)
2010年に400ドルだった売上高は2011年には400万ドルとなり、前年比 1,000%(!)の伸び、 翌年も着実に前年比94%の伸びとなった。流通網もウェブアクセスも増加している。
2013年からはRemedies, LLCというホリスティックウェルネス(心身全体をケアし、日常生活の中で自然に治癒力を高めること)の会社の一部となっている。
売上の成功はパッケージの力だけではないにせよ、いいコンセプトがあり、デザインがそれを強化し、成功した好例。HELPを見ていると、大なり小なり社会の様々な問題もデザインがほんの一押しするだけで少しでも変わることができるのではないかと期待が膨らむ。
Help
www.helpineedhelp.com