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ベルリンその3 ヤンネス・フールセンさん
ライター渡部のほうです。

まずはこちらのビデオをざーっと見て欲しい。

http://vimeo.com/43240234

ネタ元をばらすと、オンラインのカルチャー/デザインマガジン、protein
http://prote.in/feed/2012/07/xylinium-stool
を見ていたら、たまたま目に着いたこの椅子、というか表皮。

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デザイナーのヤンネス・フールセンさんはベルリン在住だというので、おお、ちょうどベルリンに行くではないか、というわけで、話を聞きに行ったのだった。
www.jannishuelsen.com

ねばねばしたモノの素はグルコンアセトバクター・キシリナスいう酢酸菌の一種(以下、長いのでバクテリアと書く)が合成したセルロース繊維。
セルロースといえば、紙の原料。まあ、紙だけじゃないけど。
つまり、木でもなく植物でもなく、バクテリアが糖類を餌に紙の素を作ってくれるのだ。
えー、そんなのあるの!?と記事を読んで驚いてしまったのだが、実際かなり昔から発見されていたものらしく、ただその活用法が模索段階のため、ほとんど世に出ていない、ということなのだそうだ。

椅子をモールドにしてこのバクテリアにセルロース表皮を着けてみたらどうなる?と実験した作品が、上の写真の乾いた紙がくっついて老化したような、その椅子。

培養してモールドにくっつけ中
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取り出した椅子のセルロースを乾燥すると
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こうなります。
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ビデオに説明されているように、培養液にモールドを入れ、数日間、ジェル状育ったセルロースがある程度着いたところで取り出し、乾燥させると、シート状のものが貼り付く。
かなり忠実にくっついているのだが、均一な厚さのシート状にはならず、また乾燥時に端が破れてしまったり、まだ椅子として完成品とは言えないのだが、逆にこの乾いた肌のようなテクスチャーがたまらなく気持ち悪くてカッコイイ(と、私は思う)。

写真だといっぱしの椅子に見えるが、実際はまだ実験段階なのでちびちび椅子状態。
ヤンネスさんと椅子のツーショットでサイズが分かると思う。

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ウレタンやら木材やら金属やらメッシュやら穴あきやらバービー人形やら、実に様々なものをモールドにして実験したもの↓
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かなりこなれた家具の作りだし、中堅デザイナーかなー、でもビデオに出ているのは結構若そうにも見えるなあ、と本人に会ったら、本当に若かった。83年生まれの29歳。イタリア、オランダなどのインターンも挟みつつ、大学院卒業したての超若手デザイナーであった。

デザイナーと呼ぶのが正しいのかどうかも分からない。
この椅子も「結果的に椅子の形を取ったけれど、素材や技術のまだ使われていない使い方を見つけて、実験することが当初からの目的」とヤンネスさん。
素材+加工が大好きな様子で、一般的な会話(ドイツのどこがいい、みたいな話とかね)をしていても、どうしてもコンクリートの話とか樹脂の話とかに持って行かれる。目をキラキラさせて。

アート、化学、工学、デザインなど、とカテゴライズしにくいものの中をただひたすら、何か到達点を探して突き進んでいるという印象を受けた。

現在、このプロジェクトも継続させながら(バクテリアの扱いは複雑で、専門の研究者、技師と開発していかねばならず、研究費が膨大なので個人では無理。後援者探し中)別プロジェクトでデザイン、アートのイベントに参加したり、あらゆることを模索中。

しかしバクテリア紙、うまく成型できる方法を確立できれば、非木材紙のあり方、ペーパーモールドの作り方、あるいは洋服の作り方、などなど、かなり色んな分野で革命を起こすと思う。
がんばれ!ヤンネスさん!
で、生計はどうやって立ててるの?と直球で聞いてみたら
「ジャージー・シーモアのところで週5日働いてる」
えっ!ジャージー・シーモア www.jerszyseymour.com って今ベルリン在住なの?え?もう10年いるの?
そっちにびっくりした。
by dezagen | 2012-09-09 04:19 | デザイナー紹介