編集宮後です。
先週からギンザグラフィックギャラリーで始まった
TDC展が特にすばらしかったので、
感動がさめないうちに書いておこうと思います。
「TDC展 」は、東京タイプディレクターズクラブ(東京TDC)が主催する
デザインコンペティション「東京TDC賞 」を受賞した作品を
展示する展覧会。毎年11月ごろに審査が行われ、
受賞作品の展覧会と受賞者によるセミナーが翌年4月に開催されます。
TDC賞2012の応募作品数は3,289点(国内2,265点、海外1,024点)。
応募点数だけで見ればもっと多い賞はほかにもありますが、
東京TDCの受賞作品には先進的なものが多いこと、
RGB部門など時代に即した応募部門もあること、
海外からの応募があること、
セミナーなど自主的な活動が充実していることなどから
最も注目すべきデザイン賞だと個人的に思っています。
で、こちらが2012年の受賞作品。
【グランプリ】
Why Not Associates+Gordon Young(イギリス)
トライアル「Comedy Carpet」(CL. Blackpool Council)
「Comedy Carpet」とは、
イギリス北西部にある街、ブラックプールの海岸沿いに
つくられたアートワーク。アーティストのゴードン・ヤングと
デザインオフィス、ホワイノットアソシエイツの共同作品で、
イギリスに昔から伝わるコメディの名セリフを床にしきつめたもの。
文字の部分はすべて厚さ3cmの大理石を切り出して並べ
上から特殊なコンクリートを流して固められています。
(印刷じゃないんです!)
1枚の板は2×4mくらいの大きさで、
その板が215枚敷き詰められているというとんでもない作品です。
(総面積は2200㎡)
ゴードンの構想から完成するまでに5年かかったという作品。
なんかもうすごすぎて、グランプリ受賞も納得です。
以下、TDC賞5点はこちら。
【TDC賞】
M/M(Paris)(フランス)
CDジャケット、ブック、アプリケーション「björk : Biophilia」(CL. björk)
川村真司+清水幹太+Saqoosha+森本友理
MV「androp music video “Bell”」(CL. 株式会社ワーナーミュージック・ジャパン)
Rick Banks(イギリス)
タイプデザイン「F37 Bella」(CL. Face37)
Martin Borst(ドイツ)
タイプデザイン「Mondra」
大日本印刷秀英体開発室
タイプデザイン「秀英体 平成の大改刻」
「Bell」は、ミュージシャンandropの曲をPVではなく
ゲーム形式でプロモーションしている作品。
ウェブサイトにメッセージを入力して
さまざまな外敵をよけながら
メッセージを届けるというゲーム。
途中で敵に攻撃されるとメッセージが壊れてしまい、
ゴールするころにはぼろぼろに壊れて意味をなさない
メッセージが表示され、それをTweetできるというもの。
くどくど説明するよりもゲームをしてもらったほうが早いので
こちらから体験してみてください。
http://www.androp.jp/bell/
ソーシャルネットワークとゲームを組み合わせた新しい表現です。
「F37 Bella」は、極端に太い線と細い線のコントラストが美しい書体。
作者のデザイナー、リック・バンクスさんは、
TypoTrumpというタイポグラフィカードの作者としても
知られています。
「Mondra」
は、通常のフォントのようにフォントデータになっておらず、
その都度、プログラミングによって生成される新しいスタイルの書体。
機械が描く平ペンの動きをPHPとPDF Libでプログラミングするという
今までにないコンセプトが評価されたようです。
そしてご存知大日本印刷「秀英体」の大改刻。
現在では10のバリエーションを持つファミリーに。
今も少しずつ追加バーションが準備されているそうです。
ここから、TDC賞以外の部門別の賞です。
【特別賞】
祖父江 慎+吉岡秀典
ブックデザイン『きのこ文学名作選』(CL. 港の人)
【RGB賞】
いすたえこ+伊藤ガビン+林洋介+宮本拓馬
特設サイト+CDジャケット「(クチロロ)新譜『CD』」(CL. commmons)
【ブックデザイン賞】
Alexander Gelman(アメリカ)
『Sequencer Books』(CL. Sequencer)
【タイプデザイン賞】
Underware(オランダ)
「Mr Porter custom typeface」(CL. Mr Porter)
祖父江さん+吉岡さんの『きのこ文学名作選』の
ブックデザインはものすごかったです。
めずらしい紙が使われているなと思ったら、
一般には流通していない紙をデザイナーの吉岡さん自ら
メーカーに手配したんだとか。情熱に頭が下がります。
オランダのUnderwareがデザインしたMr Porterは、
同名のファッションメーカーのための専用書体。
手書き風の書体ですが、同じaでもいろいろな形のaがあって
文章中でaが出てくるたびに違う形のaが自動選択されて
表示されるというしくみになっています。
実際に筆跡鑑定の専門家に見せたところ、
フォントであることが見破られなかったという逸話も。
かぎりなく手書きに近い見事な書体です。
展覧会前日に行われた「TDC DAY」では
受賞者による作品のプレゼンテーションが行われ
それぞれの作品をより深く理解することができました。
やはり作者本人の言葉で聞く説明は貴重です。
今年の受賞作は特にすばらしいので、ぜひお見逃しなく。
展示はギンザグラフィックギャラリーで、
4月25日まで開催した後、大阪のdddギャラリーに巡回し、
5月22日から7月6日まで開催されます。
http://www.dnp.co.jp/gallery/ggg/