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JAGDA東北復興支援チャリティ やさしいハンカチ展
ライター渡部のほうです。

台北に行ったのは、現地のデザイナーさんとナイスなツーショットを撮るためだけではない。
10月24日から26日までIDA(インターナショナルデザインアライアンス)の会議が台北で開催され、
http://www.2011ida.com/english/
関連デザインイベントも並行して行われる、と聞いたためである。

と、割と気楽に考えて飛行機チケットを取っていたのだが、これが規模が大きい大きい。
中心となるIDAのパネルディスカッションに加え、
台北ワールドデザインエキスポは3つの巨大会場を使い、9月30日から10月30日まで開催。
http://www.2011designexpo.com.tw/

ざっくり俯瞰どころか、一部でも見れればラッキー、ということで、
日本からの展示、JAGDAの「東北復興支援チャリティ やさしいハンカチ展」を見る。

JAGDA会員586名がハンカチのデザインを提供。
展示は台北、札幌、東京、名古屋などを巡回しながら、オンライン予約を受け付ける。
1枚1500円のハンカチを購入すると、同じハンカチが1枚、東日本大地震の被災地のこどもたちに贈られる、という仕組み。

JAGDA東北復興支援チャリティ やさしいハンカチ展_b0141474_921679.jpg



詳細はこちら http://www.jagda.org/information/jagda/1165

特設サイト http://handkerchiefs.jagda.org


うまいなあ、と思ったのは

JAGDA東北復興支援チャリティ やさしいハンカチ展_b0141474_9123069.jpg


佐藤卓さんのハンカチ。
展示にはデザイナーの名前が書いてないままだったので、ハンカチに印刷していない限り、誰のデザインなのかは分からない。
とはいえ、デザインのことに少しでも興味がある人なら、
このペンギンはクールミントガムのペンギンだ、=佐藤卓さんだ、
という連想はできるはず。
約600人もいるとネタが被ってしまう(love、絆、ハートマーク、折り鶴、クローバーなど)こと多々なのだが、クールミントガムのペンギンを他のデザイナーは使えない。

もちろんデザイナー名にこだわってハンカチを見なくてもいいわけで、「佐藤卓」という名前を知らない人でも、大人でも子どもでも受け入れやすい柄を選んだ点で、やはりうまいと思わせる。

正直なところ、今回の企画はデザイナーにとって難しかったのではないかと思う。
買う人に1枚、子どもに1枚、という条件は、誰に向けて作ればいいのか曖昧である。
1500円のハンカチを、デザインの展示で購入しようと思う層は恐らく大人、かつ、デザインに詳しい人がほとんどではないかと思う。だが、ハンカチが贈られる相手は「被災地の子ども」と、年齢も違えば、子どもといっても小学校1年生と6年生では相当メンタリティが異なるだろうし、相手の顔も見えない、かなりざっくりとしたくくりなのである。

その場合、すでにイラストレーターとして知られている、佐藤卓さんのようにアイコン的なデザインを持っていると言ったイラストレーションの力があるものは比較的方向性が明確にできるように思った。

見る側としてもやや難しかったというのも正直なところである。
ハンカチを買いたいと思っても、デザイナー名が書いていない、ハンカチにアイロンが掛かっていないのでだらしなく見える、生地が薄いため照明の加減で裏に展示されているハンカチの柄が透けてしまうものが多い、と選ぶのが難しかった上に、会場で予約を受け付けていない。
サイトのURLは壁に書かれていたが、せめてQRコードなど付けて、すぐにアクセスできるようにするべきではなかっただろうか。

海外での展示は事前の打ち合わせがままならないこともあるので、一慨にJAGDAの責任だとは思えないが、ハンカチを通してコミュニケーションを図るという企画自体は有益なことなので、今後の展示で改良して欲しいと感じている。

ただ、この展示を見ていて面白かったのは、買いづらい状況でも、写真を撮ったりすることで、見る人はなんとか展示品に近づこうとしていることだった。デザインはアートと違って、見て満足できる、というものでもない。やはり所有したいという欲が働く。ハンカチを自分のものにできないのであれば、せめて写真に収め、画像の記録によって自分のものとしようとする。
また、デザイナー名が書いていないことは、小売りの状況にも近く、直感的に欲しいか欲しくないか、で判断される環境にもある。

台北で見に来た人々がどのハンカチを一番写真に収めているのかを見ているのは面白かったのだが、やはり、というべきなのか、ファンシー好みの台湾人だけあって、猫のイラスト、写真が使われている、かわいいものが人気であった。
「デザインとして佐藤卓さんが巧い」と思うのと、実際の(台北の)消費者動向は違うのだ、ということを知るのにもいい経験だった。
by dezagen | 2011-10-28 10:01 | 展覧会