ライター、渡部です。
(以下、一部中国の簡体字、分かりにくいものは日本語の漢字にしてあります)
5月16日から19日、上海に行ってきた。
目的の1つは上海万博であり、そもそも万博に行こうと思った目的は、
ネットで見つけた、農家のロボット発明家呉玉録氏の手作りロボットが
(吴玉录 机器人 などで検索すると、たくさん出て来る)
万博に参加、という話を聞いたからなのだった、
が、
行く直前、参加したのは万博初日だけ、という情報を見つけ、
ががーんとショックを受け、さらに検索してみたところ
どうも今、美術館で展示されているらしい、という情報。
では、と向かったのが、ここ
5月4日にオープンしたばかりの上海外灘美術館。
www.rockbundartmuseum.org
元々は「亚洲文会大楼 Royal Asiatic Society」という、
美術館兼文化交流の場であった建物。
1932年に出来、52年に閉館し、以後様々な用途に使われていたが
デヴィッド・チッパフィールドの改修を経て、
美術館として蘇ることになった。
オープニングのエキシビションは『蔡國強 Peasant Da Vinci』。
蔡國強氏自身のアート作品ではなく、蔡氏がキュレーターを務め、
「農民ダビンチ」すなわち農家の発明家達の作品を展示する、という企画だ。
ロケットを飛ばすほど技術の進んでいる中国だが、
そうした専門家によるものではなく、
機械もハイテクも素人の農家の人が仕事の傍らに作った
飛行機、潜水艦、ロボットなどを集めている。
さて、目的の呉玉録氏のロボットに出会えるのか、行くまで不安だったが
あった、あった!ありました!と、思わず手を叩いて喜ぶ。
艦内撮影禁止だったため、提供写真を使わせてもらっているが、
写真はイブ・クラインのパフォーマンスを真似たもの。
この四角なロボットが実際に動くのだ。
呉氏のロボットは、人力車をひっぱるロボットや
「皆さんこんにちは。僕が絵の具を飛ばすのを見てくれてありがとう」
と喋りながら、ホントに絵の具を飛ばす、ダミアン・ハースト真似ロボット、
ネズミ型ロボット、飛び降りロボットなど、実に多彩。
他に李玉明氏の魚の形の潜水艦や、杜文達氏のUFO型(?)ヘリコプターなど、
個性ある形が多い。
通常、飛行機や船舶などは機能を重視せざるをえない、ゆえに
モノの形にキャラクター性が薄い(マニアからは違う答えが返ってきそうだが)。
しかし、彼らの作品はそうした概念にとらわれず、自由な表現であって
むしろ「こうであって欲しい」という形から入っているように思える。
呉氏のロボットが魅力的なのは、そこに人間あるいは人形らしい
愛らしさや、個性、ものの形としての魅力がふんだんに盛り込まれているからである。
美術としての展示だが、プロダクトデザイナーや車両航空船舶関係のデザイナーも
1度見て欲しいと思う。
上から3番目、ベニヤ板飛行機が展示されている場では、
何十羽ものソウシチョウが飛び交い、
非常にのどかな、気持ちよい展示でもあった。