ライター渡部です。
中途半端な時期になってしまったが、
やっと『TALKING THE DRAGON 井上嗣也展』に足を運んだ。
私を含め、私の周りで井上嗣也氏が嫌い、という人に会ったことがない。
グラフィック界では、とにかくファンが多い上に
メディアに露出することもほとんどないことも手伝って
神様のような存在である。
その神様の初の個展なのだ。
過去の作品は地下に展示。
1階は今回の展示のために作られたオリジナル作品、約40点が並ぶ。
新良太氏、久留幸子氏、レスリー・キー氏の写真に、
安藤隆氏のほぼ一言のみのコピー、というシンプルな構成。
クラゲのようなもの、なんとも言えない形は何なのだろう、
と、実は分かっていないまま、自宅に戻り
調べて見たらgggのサイトにちゃんと書かれてあった。
「強度を持つもの、曲線を持つもの、
そんな架空の生き物“DRAGON”と“光”をキーワードに、
井上が、奇跡の一瞬を写し止めたさまざまな対象に、
限りなく接近、肉薄、接触します。」
とはいえ、これは何なのか?という答えはこの際必要ない、と思う。
会場構成は壁面に並べただけで、余計な演出は一切ないことからも伺えるように、
井上氏のグラフィックは「そのままを見る」ことが、
最も喜びに溢れる体験なのである。
目が平面を追う、ただそれだけで
頭が直撃され、くらりとするほど。
今のグラフィックは「情報性」が大きく叫ばれるし
私もまたそうしたグラフィックを助長させている一人かもしれない。
「情報」のグラフィックではなく、「体験」のグラフィック。
久々の気持ちよさだった。
ちなみに、私が一番好きなのはこちら。
1階と地下の間の踊り場のポスター。
これは「作品」でなく、ポスターという機能を持っている。
街でポスターに出会える場がもっとあればいいのにと思った。
ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)
5月31日(月)まで。
展覧会の詳細は以下のサイトで。
http://www.dnp.co.jp/gallery/ggg/schedule/g286.html