BUMP OF CHIKEN TOUR DIARY



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『車輪の唄』
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メンバーから「車輪の唄(Single Edit)」についてのビデオコメントが到着!
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韓国レポート Vol.1
2004/12/18 (土) 韓国1日目
 ソウルへは成田まで行かなくとも羽田から行けるので、とても便利だ。しかも飛行時間は2時間半。沖縄とほぼ同じ。とはいえ、僕にとっては生まれて初めての韓国。遂に「一番近い外国」の土を踏む。かなり興奮しながら羽田に向かった。
 新しく出来た羽田の第2ターミナルから、無料のバスで国際線ターミナルへ行く。…………すっげ。国際線ターミナルって、佐川急便の「お荷物センター」みたい。なんで第1と第2のターミナルがあんなにショッピング・モール化しているのに、国際線ターミナルはJA(農協)のようなのだ? 自分の車で羽田に行くとこの国際線ターミナルの横を通るので、「変だなぁ、ここ。でも荷物や郵便物の国際集配所みたいなもんだろ」と思っていたら、本当のアジアの玄関だった。なんでこんなにちっちゃいのか? これはヤバい。絶対にヤバい。まがりなりにも「世界の玄関」である東京のターミナルがこれじゃヤバい。必要以上に飾る必要はないが、必要以上に他の国から来た客に素っ気なくする必要もない。韓国から来た人がこの玄関をくぐった印象を考えると、差別行為じゃねえかと思うほど粗末な玄関だ、ここ。しかも荷物&ボディ・チェックをする場所が2箇所しかなく、アホみたいに並ばされる。配給をもらうような長蛇の列が出来あがっている。もうちょっと何とかしよう。まがりなりにも免税ショップまであるんだから。

 バンプのメンバーは2度目の韓国だからなのか、やたらこなれた感じでロビーで戯れている。みんな同じチューニング・メーターのようなものを持っている。チューニング・メーターを持って囲み合っている。覗き込んでみると、発売されたばかりのソニーの「PSP」だった。しっかりゲットしやがったみたいだ。おまけに同じソフト(『リッジレーサーズ』)で赤外線通信で一緒にレースしている。すげえ楽しそう。邪魔をしようとメンバーの間に分け入って赤外線妨害してみたが、全然駄目。ちゃまが一番上手いようだな。そんなことしているうちに、遅刻魔の藤原が到着した。調子を整えようとコーヒーすする藤原、レースが止まらない3人。

 飛行機は飛んだ。飛ぶか、そりゃ。富士山方向に飛んだ。視界が良好で、しかも丹沢山脈ですでに壮観な景色を浮べていたので、升と2人で富士山チェックを楽しみにしていると、あっけなく富士山通過しちゃっていた――反対側の窓からしか見えなかったのだ。
 国際線はすごい。お得。お得かどうかはわからんが(だって勿論、値段に盛り込まれているだろうから)、2時間半のフライトなのにがっつりした食事が出る。しかも既にキムチが美味い。極めつけは「チューブ」だ。機内食の中に歯磨き粉のような、昔で言うと駄菓子屋のチョコペーストのようなチューブが一つ含まれている。なんだこりゃと思うと、「KOREAN RED PEPPER PASTE」と描いてある。つまり「コチュジャン」である。醤油のように、コチュジャン。機内の韓国人は、みんな白米の上にベターッと塗って食べている。勿論やったよ。すげえ美味しい。というか、瞬時に韓国食に染まった。僕はその時、少なくともその時だけは本気でこう思った。―――「世界を分けるのは国境じゃない。国を示すのはすなわち“味噌”だ」と。

  ◇     ◇     ◇     ◇     ◇     ◇     ◇

 向かい風で30分遅れて金浦(キンポ)空港に到着。空港は大きかった。これは僕の偏見も含まれているかもしれないが、空港の印象はカジュアルに殺伐としていた。観光対策もなされているし、広告も多い。全然ぶっきらぼうな感じはしない。だけど、それはあくまでも装飾で、芯の部分は乾いている感じがした。夜だったこともあるし、ふと見ると横にいる警察官が自動小銃を小脇に抱えていたりすることを含めてそういう印象を持ったんだと思う。あ、勿論、入国審査もロビーも、モニターはSAMSUNG。
 
 空港の出口で、みんなで携帯電話を借りる。僕は升と藤原と一緒に並んでいた。藤原が前で借りようとした時、ガイドさんに「クレジットカードがないと借りられない」と言われた。よくあることで、カードの番号を記録することでこっちが持ち逃げしたり、金払わないで逃げるということを出来なくするためだ。
 すると藤原は下を向いて、「あぁー、じゃあいいです」と言って去ろうとした。作っていないのだ、クレジットカードを。いかにも彼らしい生き方だが、今回に関してはとても困ったことになった。結果的に僕のクレジットカードで一緒に借りれたのだが、藤原は落ちてたなあ。人一倍「動物力」が強い男は、「俺って『人間力』がねーなあ………人間力が足りてねぇなぁー」と落ちていた。彼には手荒い歓迎が、韓国の玄関で待ち受けていたようだ。
 空港から出ると、いきなりバスの横っ腹に『ハウルの動く城』の宣伝が描いてある。そして、後ろから来たバスの横っ腹には『力道山』が………日本でも話題になった日韓共作映画の宣伝だ。
 バスで市街に向かった。勿論、一番前の席を占めたのはちゃまだ。もうね、奴以外、誰も一番前の席に座ろうとしないの。仕返しが恐いから。

  ◇     ◇     ◇     ◇     ◇     ◇     ◇

 ホテルは市庁舎前にあった。ロビーの写真を見てわかったのだが、目の前は日韓ワールドカップの時に何万もの韓国サポーターが集まって大騒ぎしていた広場だった。普段はまさに市庁舎前という感じで秩序に溢れた空気が流れているが、あーいう熱狂空間になると一気にアナーキズムが爆発する。モラルや既存の価値観は、テンションや感情の振れによっていとも簡単に無形化する。日本は歌舞伎町という最初っからアナ―キーな場所に人が集まったが、韓国は何も考えずに「街のど真ん中に広場があるなら、そこが政治の中心だろうとドンチャンやろうぜ」になるようだ。いいね、その反射神経と後先考えないところが。

 晩飯を食べに行く。もうすごいよ。名古屋かと思うほど、いや、名古屋より遥かに名古屋な「片道8車線」の目抜き通りを通る。街は完全にクリスマス&ハッピー・ニューイヤー状態で、ミレナリオのような煌びやかなライト・アップがいたるところに施されている。その目抜き通りを抜けてメシ屋に入った。
 今日の御飯は「韓定食」。一人あたり20皿ぐらいで、いろいろな料理をさしだすおもてなし料理。宮廷料理だったのが町に広まった、所謂「割烹料理」だという。たくさんの量をたくさんの種類で出して、もうそれだけで愛情と誠実さと腹の虫をいっぱいにさせようというメニュー。凄かったよ、「イカのキムチ」「チヂミ」「ナムル」「蟹のキムチ」「チャプチェ」「アジのフライ」「カルビの甘煮(カルビチム)」「白菜キムチ」「乾燥ナスのキムチ」「水キムチ」「オイキムチ」「チゲ鍋」「ごはん」「みかん」…………まだまだたくさん出たが、御飯4杯おかわりの恍惚感に溺れて忘れてしまった。メンバーはもう、視界に入ってくる皿の数でちょっとお腹いっぱいになったようだが、どれも美味いのでしっかり喰っている。アジのフライを藤原がおかわりしている。―――びっくりした。藤原が何かをおかわりするのを初めて見たからだ。どれほど気に入ったというのか? 訊ねると藤原はこう、答えた。

 「ちょんまるましそっそよ」

 何言ってるのかわからなかった。「それ、韓国語?」とでも聞きたかったし、普通誰でも聞くし、それが礼儀というものだろうが、僕は何しろ喰いたかった。喰いを楽しみまくりたかった。だから、その言葉へのツッコミを入れず、チゲ鍋に箸を突っ込んだ。韓国の箸は「鉄」で出来ている。普通に鉄の箸を使うという。ちょっと平たくて、使い勝手は日本人には悪い。飛行機で2時間ちょっと。多くのものが同じようなものだが、でも実際に見たり使ったりすると全然違う。それが韓国と日本なのかもしれない。
 一つだけどうにもわからなかったのが、お湯の中におこげのご飯が入ったもの。リゾットというか、粥のようなものかと思ったら、味もしないし、おこげもわずかな量しか入っていない。うー、わからん。と悩んでいたら、どうやらこれは「お茶」だという。とても高級かつ愛と礼儀に溢れたお茶だという。そう言われてみると、とても丁寧な料理に思えるから不思議だが、そんなこと考えながら店内にあった韓国太鼓をシャッフルで叩き続けてトランスしていたら、店の人に激しく怒られてしまった。残念。

 御飯を食べながら、韓国語で「とっても美味しい」と店の人に言いたいと話した。すると藤原がまるでくさなぎつよしのようにサクッと、「あぁー、それは『ちょんまる ましそっそよ』って言えばいいんだよ」と言う。さっきの「ちょんまる~」はこれだったのだ。なんだ、コイツは。すっかり現地に溶け込んでいる。他にも「音楽を聴いてくれ」とか、基本的な礼儀の言葉を、次々と教えてくれる。韓国のスタッフと藤原が他のメンバーや僕らに講習する韓国語入門が始まった。夏に来た時にいろいろな会話を経て覚えたらしい。やはり、語感の音感に対して、ものすごい「動物力」を持っている男だ。
 帰りに、あたり構わず店員に「ちょんまる ましそっそよ」と言い回った。ちょんまるは「超」で、ましそっそよが「美味かったです」だ。「鹿っぺ、『ましそっそよ』が過去形で『ましそよ』が現在形だよ。間違えないで使うんだよ」と、僕が店の人にちょんまるしている時に、背後から藤原のレクチャーが走る。先生は完璧主義者なのだ。というか、コミュニケーションのデリカシーに拘る男だ。それは彼の作る音楽からも響いている。でしょ?

 非常に美味しかったが、やっぱ何かが足りない。メンバーと一緒にコンビニに入ったが(こっちのコンビニは「25」というところ〔多分、24時間営業なんだけど、サービスは25時間分だよ!という意味だと思う〕と、ファミリーマートが圧倒的なシェアを占めていた。しかも、飲料は何故かイチゴ牛乳がすげえいっぱいあって、それだけで日本のお茶のペットボトルのようにいろいろな種類が揃っている。4種類飲んだんだけど……うん………薄かったな、イチゴもミルキーも)、やっぱ物足りない。メンバーは部屋に帰った。明日の朝、買い物に出かけるかもしれないから、今日は大人しくしておくという。はい、おやすみなさい。鹿野は牛に出逢いに行ってきます。
 
 というわけで、スタッフに付き合ってもらい、肉を焼きに行った。骨付きカルビだ。どうしても初めて訪れた韓国への自分からの礼儀として、初日に骨付きカルビしたかったのだ。お~い、出てきたよ。おばちゃん、しっかり肉のタレの中に指をずっぽり入れて持ってくるから「指ダシ」つきだね。汚いよ。こっちのカルビはタレに1日つけてるものなので、とても柔らかくジューシーだ。おばさんがつきっきりで肉を焼く。僕はもっとレアで食べたかったが、おばさんが許さない。言葉の壁をカルビで知る。
 しかも僕にとっての骨付きカルビの宇宙の中心は、「骨に付着した肉片」の部分だ。筋ばっているのに、強靭なまでに肉々しいエキスが詰まっているあそこが一番美味しい部分だ。なのに、なかなか付着肉を喰わせてくれない。最初は骨の部分を生のまま捨てようとする。僕はおばちゃんに怒ったよ。おばちゃん、もっと怒りやがった。何回も付着肉をねだったら、手をはたかれもした。でもおねだりを繰り返した。だってそこを食べに来たんだから、俺は。初の本場での付着肉なのだから。
 遂にその時が来た。オッケーが出たのだ。いえぇぇぇぇぇっー!! すごいね、ほんとすごい。その肉片に、その筋張った筋肉に、その肉からしたたる血の中に、口にいれて食するものへのすべての覚悟が詰まっている。「どうかこの味を、噛み切れない筋肉のあがきを、そしてこのタレや焼き方などの食い方に行き着いたすべての道程を忘れないで欲しい」――――少なくとも僕に骨付きカルビの骨の付着肉は、そう語っていた。

 27時、ホテルに帰って寝る。

文/鹿野 淳(fact-mag.com
by bumptour | 2005-02-15 19:30
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2004/12/18 (土) 韓国1日目
 ソウルへは成田まで行かなくとも羽田から行けるので、とても便利だ。しかも飛行時間は2時間半。沖縄とほぼ同じ。とはいえ、僕にとっては生まれて初めての韓国。遂に「一番近い外国」の土を踏む。かなり興奮しながら羽田に向かった。
 新しく出来た羽田の第2ターミナルから、無料のバスで国際線ターミナルへ行く。…………すっげ。国際線ターミナルって、佐川急便の「お荷物センター」みたい。なんで第1と第2のターミナルがあんなにショッピング・モール化しているのに、国際線ターミナルはJA(農協)のようなのだ? 自分の車で羽田に行くとこの国際線ターミナルの横を通るので、「変だなぁ、ここ。でも荷物や郵便物の国際集配所みたいなもんだろ」と思っていたら、本当のアジアの玄関だった。なんでこんなにちっちゃいのか? これはヤバい。絶対にヤバい。まがりなりにも「世界の玄関」である東京のターミナルがこれじゃヤバい。必要以上に飾る必要はないが、必要以上に他の国から来た客に素っ気なくする必要もない。韓国から来た人がこの玄関をくぐった印象を考えると、差別行為じゃねえかと思うほど粗末な玄関だ、ここ。しかも荷物&ボディ・チェックをする場所が2箇所しかなく、アホみたいに並ばされる。配給をもらうような長蛇の列が出来あがっている。もうちょっと何とかしよう。まがりなりにも免税ショップまであるんだから。

 バンプのメンバーは2度目の韓国だからなのか、やたらこなれた感じでロビーで戯れている。みんな同じチューニング・メーターのようなものを持っている。チューニング・メーターを持って囲み合っている。覗き込んでみると、発売されたばかりのソニーの「PSP」だった。しっかりゲットしやがったみたいだ。おまけに同じソフト(『リッジレーサーズ』)で赤外線通信で一緒にレースしている。すげえ楽しそう。邪魔をしようとメンバーの間に分け入って赤外線妨害してみたが、全然駄目。ちゃまが一番上手いようだな。そんなことしているうちに、遅刻魔の藤原が到着した。調子を整えようとコーヒーすする藤原、レースが止まらない3人。

 飛行機は飛んだ。飛ぶか、そりゃ。富士山方向に飛んだ。視界が良好で、しかも丹沢山脈ですでに壮観な景色を浮べていたので、升と2人で富士山チェックを楽しみにしていると、あっけなく富士山通過しちゃっていた――反対側の窓からしか見えなかったのだ。
 国際線はすごい。お得。お得かどうかはわからんが(だって勿論、値段に盛り込まれているだろうから)、2時間半のフライトなのにがっつりした食事が出る。しかも既にキムチが美味い。極めつけは「チューブ」だ。機内食の中に歯磨き粉のような、昔で言うと駄菓子屋のチョコペーストのようなチューブが一つ含まれている。なんだこりゃと思うと、「KOREAN RED PEPPER PASTE」と描いてある。つまり「コチュジャン」である。醤油のように、コチュジャン。機内の韓国人は、みんな白米の上にベターッと塗って食べている。勿論やったよ。すげえ美味しい。というか、瞬時に韓国食に染まった。僕はその時、少なくともその時だけは本気でこう思った。―――「世界を分けるのは国境じゃない。国を示すのはすなわち“味噌”だ」と。

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 向かい風で30分遅れて金浦(キンポ)空港に到着。空港は大きかった。これは僕の偏見も含まれているかもしれないが、空港の印象はカジュアルに殺伐としていた。観光対策もなされているし、広告も多い。全然ぶっきらぼうな感じはしない。だけど、それはあくまでも装飾で、芯の部分は乾いている感じがした。夜だったこともあるし、ふと見ると横にいる警察官が自動小銃を小脇に抱えていたりすることを含めてそういう印象を持ったんだと思う。あ、勿論、入国審査もロビーも、モニターはSAMSUNG。
 
 空港の出口で、みんなで携帯電話を借りる。僕は升と藤原と一緒に並んでいた。藤原が前で借りようとした時、ガイドさんに「クレジットカードがないと借りられない」と言われた。よくあることで、カードの番号を記録することでこっちが持ち逃げしたり、金払わないで逃げるということを出来なくするためだ。
 すると藤原は下を向いて、「あぁー、じゃあいいです」と言って去ろうとした。作っていないのだ、クレジットカードを。いかにも彼らしい生き方だが、今回に関してはとても困ったことになった。結果的に僕のクレジットカードで一緒に借りれたのだが、藤原は落ちてたなあ。人一倍「動物力」が強い男は、「俺って『人間力』がねーなあ………人間力が足りてねぇなぁー」と落ちていた。彼には手荒い歓迎が、韓国の玄関で待ち受けていたようだ。
 空港から出ると、いきなりバスの横っ腹に『ハウルの動く城』の宣伝が描いてある。そして、後ろから来たバスの横っ腹には『力道山』が………日本でも話題になった日韓共作映画の宣伝だ。
 バスで市街に向かった。勿論、一番前の席を占めたのはちゃまだ。もうね、奴以外、誰も一番前の席に座ろうとしないの。仕返しが恐いから。

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 ホテルは市庁舎前にあった。ロビーの写真を見てわかったのだが、目の前は日韓ワールドカップの時に何万もの韓国サポーターが集まって大騒ぎしていた広場だった。普段はまさに市庁舎前という感じで秩序に溢れた空気が流れているが、あーいう熱狂空間になると一気にアナーキズムが爆発する。モラルや既存の価値観は、テンションや感情の振れによっていとも簡単に無形化する。日本は歌舞伎町という最初っからアナ―キーな場所に人が集まったが、韓国は何も考えずに「街のど真ん中に広場があるなら、そこが政治の中心だろうとドンチャンやろうぜ」になるようだ。いいね、その反射神経と後先考えないところが。

 晩飯を食べに行く。もうすごいよ。名古屋かと思うほど、いや、名古屋より遥かに名古屋な「片道8車線」の目抜き通りを通る。街は完全にクリスマス&ハッピー・ニューイヤー状態で、ミレナリオのような煌びやかなライト・アップがいたるところに施されている。その目抜き通りを抜けてメシ屋に入った。
 今日の御飯は「韓定食」。一人あたり20皿ぐらいで、いろいろな料理をさしだすおもてなし料理。宮廷料理だったのが町に広まった、所謂「割烹料理」だという。たくさんの量をたくさんの種類で出して、もうそれだけで愛情と誠実さと腹の虫をいっぱいにさせようというメニュー。凄かったよ、「イカのキムチ」「チヂミ」「ナムル」「蟹のキムチ」「チャプチェ」「アジのフライ」「カルビの甘煮(カルビチム)」「白菜キムチ」「乾燥ナスのキムチ」「水キムチ」「オイキムチ」「チゲ鍋」「ごはん」「みかん」…………まだまだたくさん出たが、御飯4杯おかわりの恍惚感に溺れて忘れてしまった。メンバーはもう、視界に入ってくる皿の数でちょっとお腹いっぱいになったようだが、どれも美味いのでしっかり喰っている。アジのフライを藤原がおかわりしている。―――びっくりした。藤原が何かをおかわりするのを初めて見たからだ。どれほど気に入ったというのか? 訊ねると藤原はこう、答えた。

 「ちょんまるましそっそよ」

 何言ってるのかわからなかった。「それ、韓国語?」とでも聞きたかったし、普通誰でも聞くし、それが礼儀というものだろうが、僕は何しろ喰いたかった。喰いを楽しみまくりたかった。だから、その言葉へのツッコミを入れず、チゲ鍋に箸を突っ込んだ。韓国の箸は「鉄」で出来ている。普通に鉄の箸を使うという。ちょっと平たくて、使い勝手は日本人には悪い。飛行機で2時間ちょっと。多くのものが同じようなものだが、でも実際に見たり使ったりすると全然違う。それが韓国と日本なのかもしれない。
 一つだけどうにもわからなかったのが、お湯の中におこげのご飯が入ったもの。リゾットというか、粥のようなものかと思ったら、味もしないし、おこげもわずかな量しか入っていない。うー、わからん。と悩んでいたら、どうやらこれは「お茶」だという。とても高級かつ愛と礼儀に溢れたお茶だという。そう言われてみると、とても丁寧な料理に思えるから不思議だが、そんなこと考えながら店内にあった韓国太鼓をシャッフルで叩き続けてトランスしていたら、店の人に激しく怒られてしまった。残念。

 御飯を食べながら、韓国語で「とっても美味しい」と店の人に言いたいと話した。すると藤原がまるでくさなぎつよしのようにサクッと、「あぁー、それは『ちょんまる ましそっそよ』って言えばいいんだよ」と言う。さっきの「ちょんまる~」はこれだったのだ。なんだ、コイツは。すっかり現地に溶け込んでいる。他にも「音楽を聴いてくれ」とか、基本的な礼儀の言葉を、次々と教えてくれる。韓国のスタッフと藤原が他のメンバーや僕らに講習する韓国語入門が始まった。夏に来た時にいろいろな会話を経て覚えたらしい。やはり、語感の音感に対して、ものすごい「動物力」を持っている男だ。
 帰りに、あたり構わず店員に「ちょんまる ましそっそよ」と言い回った。ちょんまるは「超」で、ましそっそよが「美味かったです」だ。「鹿っぺ、『ましそっそよ』が過去形で『ましそよ』が現在形だよ。間違えないで使うんだよ」と、僕が店の人にちょんまるしている時に、背後から藤原のレクチャーが走る。先生は完璧主義者なのだ。というか、コミュニケーションのデリカシーに拘る男だ。それは彼の作る音楽からも響いている。でしょ?

 非常に美味しかったが、やっぱ何かが足りない。メンバーと一緒にコンビニに入ったが(こっちのコンビニは「25」というところ〔多分、24時間営業なんだけど、サービスは25時間分だよ!という意味だと思う〕と、ファミリーマートが圧倒的なシェアを占めていた。しかも、飲料は何故かイチゴ牛乳がすげえいっぱいあって、それだけで日本のお茶のペットボトルのようにいろいろな種類が揃っている。4種類飲んだんだけど……うん………薄かったな、イチゴもミルキーも)、やっぱ物足りない。メンバーは部屋に帰った。明日の朝、買い物に出かけるかもしれないから、今日は大人しくしておくという。はい、おやすみなさい。鹿野は牛に出逢いに行ってきます。
 
 というわけで、スタッフに付き合ってもらい、肉を焼きに行った。骨付きカルビだ。どうしても初めて訪れた韓国への自分からの礼儀として、初日に骨付きカルビしたかったのだ。お~い、出てきたよ。おばちゃん、しっかり肉のタレの中に指をずっぽり入れて持ってくるから「指ダシ」つきだね。汚いよ。こっちのカルビはタレに1日つけてるものなので、とても柔らかくジューシーだ。おばさんがつきっきりで肉を焼く。僕はもっとレアで食べたかったが、おばさんが許さない。言葉の壁をカルビで知る。
 しかも僕にとっての骨付きカルビの宇宙の中心は、「骨に付着した肉片」の部分だ。筋ばっているのに、強靭なまでに肉々しいエキスが詰まっているあそこが一番美味しい部分だ。なのに、なかなか付着肉を喰わせてくれない。最初は骨の部分を生のまま捨てようとする。僕はおばちゃんに怒ったよ。おばちゃん、もっと怒りやがった。何回も付着肉をねだったら、手をはたかれもした。でもおねだりを繰り返した。だってそこを食べに来たんだから、俺は。初の本場での付着肉なのだから。
 遂にその時が来た。オッケーが出たのだ。いえぇぇぇぇぇっー!! すごいね、ほんとすごい。その肉片に、その筋張った筋肉に、その肉からしたたる血の中に、口にいれて食するものへのすべての覚悟が詰まっている。「どうかこの味を、噛み切れない筋肉のあがきを、そしてこのタレや焼き方などの食い方に行き着いたすべての道程を忘れないで欲しい」――――少なくとも僕に骨付きカルビの骨の付着肉は、そう語っていた。

 27時、ホテルに帰って寝る。

文/鹿野 淳(fact-mag.com
by bumptour | 2005-02-15 19:30 バンプオブチキンExcite エキサイト: ミュージック: BUMP OF CHICKEN: BUMP OF CHICKEN TOUR DIARY
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