はぁ、あたし疲れちゃった……(&上目遣い。が、目が小さいんで効果ナシ)
引っ越しと諸々の残務処理でバタバタしてますんで、「康さん(後編)」へ行く前にちょっと休憩させてください。ゆっくり書きたいんです、康さんのことは。
というわけで、全国16人のoka-changファンの皆さん、お待たせしました!今回は、連載早々に番外編登場です!早速デタラメやってるけど、許してね。
今から15年くらい前かな?遊び友達から紹介されたのがB君で、B君というのは……なんていうか、いつもみんなから少し笑いモノにされてるような、いじられキャラの男の子。とても素直で、美しい女性に対して照れずに「美しい!」といえる珍しいタイプの男の子でした。
B君が車を所有していたこともあり、遊びに行った帰りはいつも自宅まで送ってくれるんだけど、その車がミラパルコというのもあって、寸でのところであたしは彼を「男」として見ることができなかったんだな。
ほんと、皆さんも軽自動車の破壊力には気をつけた方がいい。いや、これは本人が思ってるよりも強力。だったら自転車二人乗りの方がよっぽど夢があるし。「あたしドリーム」の中では。
それでも夜明けのクラブでみんなと別れた後、彼のミラパルコに乗り込むと「やっとオカチャンを独り占めにできた」なんて可愛らしいことを言う。カーステレオと夜明けの空を味方につけて、車中20分間をフルに使い、死ぬほど狭い車の中であたしにアピールしまくっていた。
帰宅途中のインターチェンジには、アノ手のホテルがわんさかある。
INしようと思えば、……ハンドルをググーーーッと左に切れば、桃色の扉はそこかしこにあるはずなのに、B君は「オカチャンがちゃんと僕のことを好きになった時に死ぬほどヤリたい」とのことで、最後までもろもろ我慢してくれていた。うん、そこはとってもジェントルマンだった。
あたしもあたしなりにB君に興味は持っていた。B君には面白い法則がいくつかあった。
自分を「1本の木」に見立て、足元は「土」だから茶のスニーカーかブーツ。Tシャツなど真ん中に当たる部分は緑、頭の部分は「空」とのことでブルー系のキャップをいつも被っていた。
「B君、けっこうロマンティストじゃん」
「惚れた?」
「うるせー、ミラパルコ」
というのがいつものやりとりで、こちらのストレートなかわしに対しムダに傷つくことのない関係が、20歳で、今以上にふんぞり返りまくっていた当時のあたしにはしごく心地よかった、と。
そんなB君ぞっこん状態の最中、まったく突然、あたしは結婚することになった
これは自分でも予期していなかった。自分で決めたことなのに、あたしですら対応するのにいっぱいいっぱいだった。
あたしは多少浮かれてこのことをB君に報告した。爪の垢程度の優しさから、相手がどんな人かは特に話さずにいた。
B君は、
「いつかこういう日が来るとは思っていた……」
と静かにそれを受け止めてくれた。
後日、「オカチャンに見せたいものがある」と、鉛筆書きのレポート用紙をあたしに渡した。
「恥ずかしいから、うちに帰ってから読んで」という。
もちろん大きな声で読み上げてあげた、ミラパルコの中で。
Dear オカチャン
僕の大好きなオカチャン、生まれて初めて本当に美しいと思った人。
〜けっこうどうでもいい思い出話が続くため省略〜
最後にオカチャンを見て僕は安心した。
(今夜もきれいでよかった……)
意味がよく分からないかもしれないけど、この事実がいつも僕は嬉しかった。
僕のオカチャン。お元気で。幸せになってください。
Bより
実はこの素直な大きいおともだちがあたしはとても好きだったみたい。でもそれは、「愛されてるから、好き」という、関係性が前提にある「好き」だった。
この人より、あの人……まだ知り合って1週間足らずのあの人は、あたしのことを愛してくれているのだろうか?より強く深く愛してくれてる(けどミラパルコな)人の元へ旅立つ方が女性は幸せになれるんじゃないか?
が、すべては始まってしまっていた。戻る方が……なんていうか面倒くさかった。
B君とは、それっきり。結婚した数年は、この手紙の存在すら忘れて過ごしていた。
今夜、この原稿を書くにあたって、久々に読み返しちゃったじゃないか……
「だからって……ねぇ?」は、あたしの悪い癖でもあり、良い癖でもある。
今夜に限って「だからって……ねぇ?」が悪い癖に感じてしまうのは、今の自分があの頃のB君に対して、あんまり自慢できるものじゃないからなのかな?
B君、悪いけど、あたし結局幸せになれなかったよ。でも後悔はしてないの。「後悔」って、いまだにやり方がよく分からなくて……。(手の甲にたばこの火を押し付けながら)
仮に今、B君がポルシェに乗って「オカチャン、高速6時間かけて迎えに来たぜ」とやってきても、あたしはやっぱ、乗れないな。「うるせー、ミラパルコ」と言って、絶対自分の部屋には入れないと思う。帰りに窓から覗いちゃうかもしれないけど。