
主催旅行のパンフレットを見ると、短期間に見所を効率良く詰め合わせて無駄なく旅行が
出来るようになっていますね。これはこれで存在価値があり、とにかく旅行会社に身を
ゆだね添乗員の旗の下遅れずについて行けば、過不足なく旅行が達成できます。
これを今ファーストフードにちなんで「ファースト・トラベル」と命名しましょう。
一方、スロー・フードに相当する「スロー・トラベル」もまた楽しいものです。
私は家族で夏の1週間をフランス、ロワール地方で過ごしました。
全てが圧縮され密度の濃いい喧騒的なパリと異なり、ロワール河の流域の町での滞在は
ロワールの様にゆったりと時が流れて行きます。
ホテルもテラスや中庭に面したところが多く、朝食や昼食は庭の木陰で取ります。
特に今日乗らなくてはならない観光バスもなく地元の地図を広げて自転車で町を巡る順序
を家族で検討し、出発です。
フランスの田舎は丘、川、森が程よく配置され(?)ジョルジュ・サンドの小説やゴブラン織
に出てくるような穏やかな景色が多く、度々自転車を降り草原や川辺に寝転がったりの連続
となります。
途中の店で調達したサンドイッチ(バゲットにハム、カマンベール、レタス、トマト)
豆のスープ、チキンの丸焼き、地酒のワイン等などを草原に広げて食べる楽しさは格別です。
印象派の絵画のシーンに入り込んだような気分になります。
ルノワールやシスレイが描くセーヌのほとりでの舟遊びやピクニックを、当時のパリジャン
(都会人)がどんなに憧れていたのか実感として分かるような気がしますね。
食事のあとは城めぐりです。ロワール河流域のシャトーは数多く点在していて自転車では
少々遠いところもあります。そんなときに最適な乗り物はシトロエン2CVです。
「ドゥシュボー(2馬力)」と親しみ深く呼ばれるこの自動車は簡素で走るために必要な
物以外は何も装備されていません。屋根はテント布地、椅子はハンモックのような構造、
ギアもダッシュボードから突き出した取手を引っ張ったり押したり結構忙しいものですが、
不思議と自分がこの車を操っているという充足感のある車です。
フランスの街や田舎で写真を取ると、必ずどこかにこの車が写っており、景色の一部なん
ですね。無駄を排して本質そのものを追求するフランス人(少々誉めすぎ?)、ケチで
始末屋(その通り)のフランス人のハートをがっちりと捕まえた車ですね。
残念ながら、高速化や安全基準には耐えられず10数年ほど前に製造は中止されました。
私はBX、XANTIA、C5とここ20年ほどシトロエン車に乗っていますが、2CV程
楽しい車はなかったような気がします。
数あるシャトーの一つシュヴェルニーを訪れた時は、丁度小学生の遠足に出会いました。
「遠足ですか?」
「ええ、お天気が良くて何よりですわ。
それに明日から夏休みなので子供たちがうきうきしてますの」
でも、一番喜んでうきうきしているのは学校の先生の様でした。
総務担当 山波 花里丘(さんば かりおか)

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