2009年9月19-20日に川崎で行われたオールナイト・イベント、TaicoClub出演のために来日したムームに小倉@ICELANDiaは会ってきました。
ごく雑談に近いインタビューですが、ゆるい話の中に、ちょっとしたアイスランド人らしいエッセンスを感じていただければと思います。
ICELANDia音楽ショップでは、アイスランドのみに流通しているムーム関係のレア盤を扱って居ます。興味ある方はこちらをご覧ください。
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新作『Sing Along to Songs You Don't Know』はピュアな水
日本の9月はまだ暑い。でも、インタビュー当日は暑さも和らぎ、少しばかり肌寒い季節になってきてよかった。いくらTaicoClubが夜のイベントでも、夏だとアイスランド人が溶けちゃいそうだもんね。
前回日本に来た時は、メンバー全員集合のインタビュー。今回はグンナル、オルヴァル、サムリの3名。前回はバックステージで話を聞いたけど、今回はいかにもインタビューっぽいセッティングで、なんだか落ち着かない。というのも、オルヴァルとグンニには7月に原田知世さんのレコーディングで会ったばかりなので、改まって話を聞くという設定が少し不思議。なので、超ありがちな質問から。
Y(小倉):再度日本へようこそ。来日は何度目?
G(グンナル):10回程度かな。
Y:結構来てるのね。かなりの日本通でしょう。
G:まぁね。
Y:私も来月またアイスランドへ行くからよろしくね。
O(オルヴァル):(音楽フェスの)Airawves?
Y:そう、20名程度お客さまを連れて。
O: ひゃ〜、そりゃ大所帯だ。
Y:日本の人口が大所帯だからね。
ICELANDiaブログの読者のみなさんはご存知かと思いますが、アイスランドの総人口は32万人。なので、20名は総人口の0.006%で、日本の人口だと7500人分になります(って、計算しても全然意味がない(笑))。 
Y:このニュー・アルバムは大好きで、『Finally〜』と最新の『Sing Along to Songs You Don't Know』が個人的な一番のお気に入り。
(と言いながらニュー・アルバムをテーブルの上に出すと)
S(サムリ):何で日本盤じゃないの?
Y:ウッ、ごめん、安かったから外盤買った。
S:日本盤の方がボーナスが3曲入っているんだよ。
G:すごくいい曲が揃ってるんだぜ。
O: 君だけのために入れたんだしぃ。
Y:(小さくなりながら)メチャ有り難う。日本盤も買うからね(冷汗)。
日本盤を持っていないことに私が冷汗をかいていると、メンバーは日本盤と外盤の違いを細かく比較し始める。あれやこれやの指摘があり、やはり日本の印刷技術が優れているという軍配に。
Y:前作の『Go go』はとてもカラフルで、盛りだくさんで、楽しくてというアルバムだったけど、今回の方が抑えているというか、いい意味で落ち着いたというか、そういう印象を受けるんだけど。
G:スローな曲が多いからかな。
O: シンプルで、スペーシーなのかな。そうか、今回のアルバムはピュアな水が入ったコップみたいなもので、前回のはカクテルって感じかも。
Y:ジャケットの写真はどこで写したの?アイスランドじゃないみたいに見えるけど。
O& G:アイスランドだよ。ミーヴァトン湖だ。
G:でも、写真そのものじゃなくて、写真の上に色を乗せてるんだけどね。
Y:レコーディング期間は?どんな風にレコーディングしたの?というのも、サムリもヒルドゥルもアイスランドに住んでいないでしょう。
O: 僕らはいつも移動してるから、行く先々で録音した。僕らが彼らのところへ行ったり、彼らがアイスランドに来たりもするし。
S:でもこのアルバムはレコーディングするのにそれほど時間がかからなかった。
O: 結構サクっと録音したよね。
G:レコーディングもミックスも結構素早かった。今までで最短だと思う。特にオルヴァルのところに赤ん坊も生まれたから、彼に産休を取ってもらいたかったし。
S:そうそう、だから主なところは数ヶ月足らずでレコーディングしたよね。
うわぁ、さすが高社会福祉国家の民!男性が産休を取るのは当然、というか義務。それはミュージシャンも同じで、これに協力しない人は存在しないほど当たり前の話。どこぞの大国家のオジサマ方によーく耳を傾けていただきたい発言です。
エストニアのコーラス隊と湖のキャンドル
Y:エストニアのコーラスはどんな経緯で?
O: 偶然が重なったのかな。僕らも何が起こったのか、よく分かってない(笑)。
G:元からコーラスを使いたいと思っていて、エストニアには素晴らしいコーラス隊がたくさん存在していることは聞いていた。コーラス文化が盛んな国で、シンギング・レヴォリューション(歌う革命)って言葉があるほど。
O: ヒャルタリンのホグニが時々僕らと演奏してくれていて、彼がエイリキュルの代わりにエストニアに僕らと来ることになった。彼は既にエストニアへ行ったことがあり、コーラスに関していろいろな知識を持っていたんだ。
S:それにエストニア人はすごく協力的で、「コーラスとやったみたいなと思ってる」ってちょこっと言うと、「わかった」と二つ返事であちこちに電話を入れてくれ、いくつかのコーラス隊と連絡が取れて、みんな「ぜひやりたい」と言ってくれた。
O: なんかもう、僕たちが世界の中心で動いていたような感じだったよ(笑)。
Y:コーラスの規模は?
G:25人程度かな。
Y:エストニアへ行った本来の目的は?ライブ?
O: 湖でライブをやった。湖の真ん中で。その周囲にキャンドルが浮いていたっけ。
S:観客は湖の周囲に座って、ね。すごくいい雰囲気だった。
O: ほら、ニュー・アルバムのカバーを見てごらんよ。湖の中にキャンドルがあるだろう。
Y:あぁ、そういう意味なの?!
O: いや、そうじゃない。今気づいたんだ。単にキャンドルを入れただけなのに、思い返せばそういうことだったのか、と、ちょっと奇妙な気がする。
G:ムフフ(意味のわからない笑)
O: 湖にキャンドルがあるのは、特に何の意味もないんだ。何も意図した訳じゃない。平和のキャンドルとか、そういう意味でも何でもなかった。
Y:私は”Kreppa(アイスランド語で今回の経済危機のことを示す)”の渦中にともる一筋の光かとも解釈してたんだけど。
O: それも悪くないね。キャンドルが溺れかけてる人の象徴とか。
Y:危機と言えば、アイスランドの経済崩壊は音楽に影響したのかな。
O: よく「影響」について質問されるけど、物事は人間としての僕らに影響を与えるけど、音楽そのものには関係ないと思ってる。
Y:インタビューの冒頭で、前回のアルバムがカクテルで、今回のは水だって言っていたでしょう。カクテルはパーティー・タイムで、水がベーシックってことじゃないかと思うんだけど。つまり、バブルのバカ騒ぎは終わって基本に戻ろうっていう。
S:なるほどね。僕らのアルバムを聴く人が、どういう解釈をするかっていうのは興味深いね。 それが美しいところだな。
自分の人生に大きく影響する物事が、音楽の中ににじみ出てきたとしてもおかしくないし、程度の差こそあれ、何らかの影響は出ると思う。でも、何がそこに現れて、何が現れなくて、ある事柄だけが現れるのかもわからないし、具体的に何がどう音楽に出てくるかはよくわからない。
O: 危機とか崩壊とか言うけど、実際はみんなが想像するようなのとは全然違っていると思う。危機というよりも、「目覚め」だと感じている。
G:確かに。
O: 本当の意味での「危機・恐慌」というのはこれからだと思う。ひどく失業者が増えるとか。それは来年じゃないかな。
確かにアイスランドの金融バブルの崩壊は大きな教訓だったでしょう。でも、ここで不思議に思ったのは、実はこのインタビューの前日にアイスランド大使館で業界向けの観光セミナーがあり、その時の話でも、また、その頃の新聞報道による政府の正式な見解でも、景気は来年から上向きになると予測されていたこと。
経済の話はややこしいので突っ込まなかったけど、たぶん、実際の感触としては、来年の方が失業者が増えるような感じなのかもしれない。
Y:なるほどね。でも、ムームにとってはこの状態は悪くないんじゃないの?というのも、収入は外貨が主でしょう。そうなると外貨ベースで稼げるグループは、今のアイスランドでは断然有利じゃないかと思うけど。
O: 以前のISKは異常に高かったから、やっとバランスが取れたと感じている。だって以前はいくら働いても、ISK(アイスランド・クローナ)に両替すると、少額にしかならなかった。だからここに来てやっとバランスが取れたって感じだ。
G:でも、稼ぐとまではなかなか・・・。何とか生活をやりくりしているっていうだけで。
O: そうそう、音楽ビジネスに10年関わってきた僕らの生活はずっと苦しいままだ。だから世間から突然経済危機だと言われても、僕らは10年ずっとその状態だから、かつての銀行マンから「来月の支払をどうすればいいのか・・・」なんて話をされても、「ようこそ」って感じだ(笑)。
この仕事は保証も何もないからね。、仕事がなければイコール失業状態だから。
Y:レイキャヴィクの音楽シーンは、危機後の方が盛り上がっているという話も聞くけど。
O: 確かに、最小限の打撃しか受けなかったというか、受けようがなかったと思う。だって・・・
Y:どちらにしてもビンボーだったから。
O: 平たく言えばそんなところだ。それに、アイスランドの音楽業係者は、アイスランドのビジネスのやり方はおかしいと警告していたくらいだし。環境保全だとかエコだとか、表面的に解釈されていたけれど、もっと根本的な意味で、あのやり方じゃ続かないというのを告発していたんだけどね。特に巨大アルミ工場なんていうのは、アイスランドのような小国には何か起きた時に衝撃が大きすぎる。
というオルヴァルの発言は、2008年6月末に行われた、ビョークとシガーロスによるNatturaのイベントのことだと思われる。
Y:そういえば、(Natturaのきっかけを作った)アンドリの本「 Dreamland: Self-help for a frightened nation」も日本語訳が出るのよ。
O: あれは本当にいい本だ。アイスランドだけに限った問題じゃないし、アンドリは優れた思想家でいろいろなことを熟考していると思う。世界中どこでも読まれてしかるべき内容だと思う。
実はアンドリのインタビューも6月に録ってあるんだけど・・・これのブログアップは10月か11月になりそう。
Y:ところで、グループ結成当初から比べると、最近は男性ヴォーカルが前面に出てきて、今回のアルバムでは曲によってはデュエットみたいな感じですよね。
S:それはね、押し入れの中に隠れてたオルヴァルが、大胆になって表に出て来たってことだよ(笑)。
O: なにせとてもシャイだからね(とグンニを指す:笑)
Y:あれには驚いたわ。スタジオで「シャイだからみんなの前では歌えない」って言われた時、半ば信じられなくて、一瞬考えたもん(笑)。
G:ウッウッ(泣き真似)。
内輪話にて失礼します。知世さんの「US」という曲にはオルヴァルとグンナルのヴォーカルが入っています。スタジオではオルヴァルが無事に自分のパートを歌い終え、次にグンナルに歌ってもらおうとするとーーー
「恥ずかしくて、みんながいるところでは歌えない。自宅で録音させてほしい」という発言。
いくらシャイだといっても、レコーディング・アーティストでしょう。みんながいるとスタジオで歌えないって・・・。笑ってはいけないと思いつつ、スタジオで全員が大爆笑でした。
Y:最後にRunkのメンバーについてを教えて。写真で、ヒルドゥル(現ムーム)とボルコまでは分かるんだけど、あと、顔がわかんな〜い。
全員:金髪がSvavar Petur Eysteinsson(現スカッカマナゲ)、緑の帽子のヒゲ男がベンニ(ヘムヘム)、ドラムスティックを持っているのがOli Bjorn Olafsson(現Nix Noltes、元unun)
G:それで、Runkのアルバム『Ghengi Dahls』のエンジニアが僕。
O: このバンドは本当にオールスター・バンドだったよなぁ。すごくいいアルバムだし。それぞれが、ものすごく才能も個性もあって、緊張感がものすごかった。
Y:スーパー・バンドってことね。
O: そう、あまりにも天才的なのが集まりすぎていて、結果は爆発せざるをえなかった。バンドとしては続かなかったということだね。
『Runk』は2002年にリリースされたアルバムで、荒削りでチープな音作りがなかなか魅力的。現在ムームの一員として活躍しているヒルドゥルが、ヴォーカリストとして頑張っているのも微笑ましい。声がやたら可愛いし。
マニアックなアルバムだけど、持っていると、少しばかり凝った話題ができて便利です。
Y:それじゃ明日、TaicoClubの演奏を楽しみにしてますね。知世さんとも会うのよね?
G:対談もあるし、共演もすることになっているからとても楽しみにしてる。ライブはすごく楽しいものにするからね。
という言葉通り、TaicoClubでのムームの演奏はすご〜く楽しかった!知世さんとの共演もーーーというレポートは、別口にお送りしますね。

えと、私が年甲斐もなくミニを履いているので、インタビューの前振り用に先週小さく出したら、シバノさんがわざわざ別ヴァージョンを送ってくださいました。なので、チーと恥ずかしいけれど記念にアップさせてください。
ちなみに、グレーのスェット(インタビューでは緑のシャツ)がグンナル、紺色がオルヴァル、赤っぽいのがサムリです。
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*今回のインタビューの写真も、お馴染みのフォトグラファー、シバノ・ジョシアさんにお願いしました。シバノさん、いつも本当に有り難う御座います。
シバノさんはマメにアイスランドの写真をご自身のブログにアップしているので、ぜひそちらもご覧ください。
Onabys Blog / Iceland ・アイスランド 写真集
http://onabys.jugem.jp/
*ICELANDiaブログのためにインタビュー時間を確保してくれたレコード会社のご担当社にもこの場を借りてお礼申し上げます。いつもお気づかいいただき有り難う御座います!(小倉悠加 / Yuka Ogura)
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